ウォッカ
| この項目では、蒸留酒について説明しています。競走馬については「ウオッカ」をご覧ください。 | 
ウォッカ(ロシア語: водка ヴォートカ;ポーランド語: wódka ヴートカ;ウクライナ語: горілка ホリールカ)は、ロシアやポーランド、ウクライナなど東欧・旧ソ連圏で製造されている蒸留酒。日本の酒税法上はスピリッツに分類される。大麦、小麦、ライ麦、ジャガイモなど穀物を原材料とし、蒸留後、白樺の炭で濾過して作る。このため、一般に無味無臭無色である。ただし、フレーバード・ウォッカ(フレイバード・ウォッカ、フレーバー・ウォッカなどと表記されることもある)のように、香味が付けられているものも存在する。
ヴォトカ、ウォトカ、ウォツカ、ウオッカとも表記される。なお、ウォッカの読みは日本における慣用とされ、むしろ原語発音に近いヴォトカ、ウォトカないしウォツカに修正される方向にある。
成分は、ほとんどが水とエタノールであるため癖が少ない。このため、本来ウォッカを常飲していたロシア・東欧圏以外では、カクテルの材料の1つとして他の飲料と混ぜて飲むことが多い。一方、ロシア・東欧圏では「混ぜ物をしてウォッカを飲む」ということは邪道と目されている。スラブ諸語においては、ウォッカは「水 (вода)」から派生した名詞である。
なお、日本ではウォッカはひとつの酒類の固有名称であるように扱われているが、ロシアなどでは単に「蒸留酒」を表す一般名詞である。ロシアの少数民族で飲まれていたような蒸留酒も、ロシア語ではすべて「ウォッカ」と区分されている。
目次
ウォッカの種類[編集]
穀物[編集]
- ライ麦
 - ポーランド産が多い。
 - グレーン
 - 色々な穀物を原料としたもの。
 - 小麦
 - 小麦をメインとしたもの。
 - 大麦
 - フィンランド産に多い。
 
穀物以外[編集]
- ミルク
 - ミルク等から抽出した乳糖を原料としたもの。
 - フルーツ
 - アメリカ産が多い。
 - じゃがいも
 - ポテトをメインとしたもの。
 - ビート(甜菜)
 - サトウダイコンをメインとしたもの。
 - モラゼス
 - サトウキビの廃糖液をメインとしたもの。蒸留方法等によりラム酒にもなる。
 - フレーバード
 - 生姜・唐辛子・パプリカ・ハーブ・レモン等で風味付けたもの。
 
歴史[編集]
12世紀ごろからロシアの地酒として飲まれるようになったといわれているが、11世紀のポーランドで飲まれていたとする説もあり、詳細な起源は不明である。
14世紀のポーランドでは公衆衛生の概念が定着しており、ウォッカで食器などを消毒したり腋や足などを消臭する習慣があった。このことは1405年のポーランド王国の宮廷の記録に残っている。アルコールで消毒や消臭をする習慣はアラビアからポーランドへの陸上交易(当時はアジアとの貿易は船でなく陸上で行われ、ポーランドはヨーロッパの東西交易の中心地だった)によって伝わったものとされる。同時代のヨーロッパではペストが大流行していたが、ポーランドのペスト被害は最小限に収まっている。当時のフランスやドイツではペストの原因として、「ユダヤ人が井戸に毒を入れたから」というデマとともにユダヤ人に対する迫害が激化したが、当時のポーランド国王カジミェシュ3世はそれを単なるデマだと考え、ポーランド王国はユダヤ人の西欧からポーランドへの移民や難民を積極的に受け入れ、以後ポーランドはヨーロッパでもっともユダヤ人の多い国となる。
1794年に白樺の活性炭でウォッカを濾過する製法が開発され、それ以降ウォッカは「クセの少ない酒」という個性を確立する。
1917年のロシア革命により、モスクワのウォッカ製造会社の社長ウラジーミル・スミルノフがフランスに亡命し、亡命先のパリでロシア国外では初めてウォッカの製造販売を始めた。このスミノフの工場に1933年、ロシアからアメリカに亡命していたルドルフ・クネットが訪れた。クネットはアメリカとカナダにおけるスミノフ・ウォッカの製造権と商標権を買い取って帰国。以後、アメリカ産ウォッカの製造が始まり、アメリカは世界屈指のウォッカ消費国となる。
ウォッカ戦争[編集]
欧州連合における、ウォッカの定義に関する議論を俗にウォッカ戦争という[1]。
- 穀物、ジャガイモが原料のもの以外はウォッカとして認めない - ポーランド、スウェーデンなど
 - サトウキビやブドウが原料のものも認めるべき - イギリス、オランダなど
 
以上の二派に分かれ、5年の間議論が続けられた[1]。
議論は2007年12月17日に決着し、「原材料を明記することによって、ウォッカと認める」という結論で双方が合意した[1]。
ウォッカの生産国と主な銘柄[編集]
東欧[編集]
ウクライナ[編集]
- スラヴァ
 - ネミロフ
 - ナレヴァイコ
 - ミールナ(Мірна / Мѣрна) ウクライナ語で「厳選された」といった意味。さまざまな製造方法の製品が揃えられており、庶民的値段のもののうちでは、もっとも良いとされているものひとつ。
 
エストニア[編集]
ポーランド[編集]
ポーランドのウォッカは、主にプレミアムクラスはライ麦、スタンダードクラスはジャガイモや果物などを原料としているものが多い。ポーランドでは中世の昔から、ピュアウォッカ(ヴトゥカ・チスタwótka czysta)だけでなく、ハーブ・スパイス・香木・果物などで香りをつけたフレーバード・ウォッカ、フレーバード・ウォッカの一種で原料のライ麦の香りを残したまま木の樽で熟成させるスタルカ(オールドウォッカ、ロシアのスタルカとは異なる)も多数製造されている。
主なウォッカは以下のとおり。この他にも多数のブランドがある。
- ズブロッカ(ジュブルフカ)(Żubrówka) - フレーバード・ウォッカ
 - スピリトゥス(スピリタス)・レクティフィコヴァヌィ (Spirytus Rektifikowany)
 - ベルヴェデーレ・ヴトカ (Belvédére wódka)
 - ヴィボロヴァ (Wyborowa)
 - チェリーウォッカ(ヴィシニュフカ)(Wiśniówka) - フレーバード・ウォッカ
 - オジェフフカ (Orzechówka)
 - ジトニャ・ヴトカ (Żytnia wódka)
 - ショパン・クラシック (Chopin Classic)
 - ショパン・ブラック (Chopin Black)
 - マクシムス (Maksimus / Maximus)
 - ダンスカ (Dańska)
 -  コペルニクス
- シーズンド (Copernicus seasoned) - フレーバード・ウォッカ
 - ピュア (Copernicus pure)
 
 - サクセス (Sukces)
 - トルンスカ (Toruńska)
 - シリヴォヴィツァ・ポルスカ (Śliwowica polska) - フレーバード・ウォッカ
 - ジギスムンドゥス・III・ヴァーサ (Sigismundus III Vasa) - フレーバード・ウォッカ
 - アルペイスカ (Alpejska)
 - アマトル (Amator)
 - チスタ (Czysta)
 - グローバル・ライト (Global Light)
 - グランド・マキシマム (Grand Maximum)
 - マゾヴィェツカ・ジトニア (Mazowiecka Żytnia)
 - ミレニアム (Millenium)
 - スピリトゥス(スピリタス)・ドモヴィ・チスティ (Spirytus Domowy Czysty)
 - ウニヴェルスム (Uniwersum)
 - ズウォタ (Złota)
 - ゾジャ (Zorza)
 - アップルウォッカ(ヤブウコ) (Jabłko) - フレーバード・ウォッカ
 - クジェスカ (Krzeska) - フレーバード・ウォッカ
 - ワゴドナ (Łagodna) - フレーバード・ウォッカ
 - ルプチック (Lubczyk) - フレーバード・ウォッカ
 - トゥンドラ (Tundra)
 - ウニヴェルスム・ブラックカラント (Uniwersum Black Currant) - フレーバード・ウォッカ
 - ウニヴェルスム・ブラックカラント・ホワイト (Uniwersum Black Currant Biała) - フレーバード・ウォッカ
 -  スタルカ
- スタルカ10年 (Starka 10) - オールドウォッカ
 - タルカ15年 (Starka 15) - オールドウォッカ
 - タルカ20年 (Starka 20) - オールドウォッカ
 - タルカ25年 (Starka 25) - オールドウォッカ
 - タルカ30年 (Starka 30) - オールドウォッカ
 - スタルカ50年 (Starka 50) - オールドウォッカ
 
 - シャンベラン (Szambelan)
 - ポモルスカ (Pomorska)
 - ポモルスカ・ゴーシュカ (Pomorska Gorzka) - フレーバード・ウォッカ
 - ヴィルトゥオズ (Wiltuoz)
 - ドヴル・アルトゥサ (Dwór Artusa)
 - ジャズ (Jazz)
 - バルサム・ポモルスキ (Balsam Pomorski) - フレーバード・ウォッカ
 - バルサム・ポモルスキ・ス・ジュラヴィナ(with クランベリー)(Balsam Pomorski z Żurawiną) - フレーバード・ウォッカ
 - グダンスキ・スピリトゥス(スピリタス) (Gdański Spirytus)
 - スタロガルヅカ (Starogardzka Wódka)
 - ヴトゥカ(ウォッカ)・グダンスカ (Wódka Gdańska)
 - ビャワ・ダーマ (Biała Dama)
 - ポロネーズ・ブラックラベル (Polonaise)
 - ポロネーズ・ブルーラベル (Polonaise)
 - ワンツト (Łańcut)
 - ハルナシ (Harnaś)
 - ツェーケー(シーケー) (CK)
 - プロ・ポローニア (Pro Polonia)
 - ポルカ (Polka)
 - クラコヴィア・クラシック (Cracovia Classic)
 - クラコヴィア・シュープリーム (Cracovia Supreme)
 - タトラ (Tatra)
 - フィドラー (Fiddler)
 - クラコフスカ・ヴトゥカ (Krakowska Wódka)
 - プシェプランカ・クラクフスカ (Przepalanka Krakowska) - フレーバード・ウォッカ
 - スピリトゥス(スピリタス)・クラコフスキ (Spirytus Krakowski)
 - クラクス (Krakus)
 - ルクスソーヴァ (Luksusowa)
 - パン・タデウシュ (Pan Tadeusz)
 - シヴハ (Siwucha) - フレーバード・ウォッカ
 - ソプリツァ (Soplica)
 - ジョウォンドコヴァ・ゴーシカ (Żołądkowa Gorzka) - フレーバード・ウォッカ
 
ロシア[編集]
- ロシアン・スタンダード (Russian Standard / Русский стандарт)。
 
- サンクトペテルブルクのお酒。ロシア語読みでは「ルースキー スタンダールト」。
 
- バルティスカヤ (Балтийская)
 
- 「バルト(海)の」という意味。
 
- ストリチナヤ (Stolichnaja / Столичная) - 「首都の」を意味するウォッカ。厳密な読みは「スタリーチナヤ」
 - プーチンカ
 - クリスタル
 - モスコフスカヤ (Moskovskaja / Московская) - 「モスクワの」ウォッカ。
 - ストロワヤ (Stolovaja / Столовая) - ロシア語で「食卓の」を意味する。
 - スタルカ (Starka / Старка) ブランデーとのハーフブレンド。
 - ペルツォフカ (Pertsovka / Перцовка) - 唐辛子が漬けてあるため、赤く辛い。別名「ウクライナの剣」
 - サルート ズラットグラヴァヤ (SALUTE ZLATOGLAVAYA / САЛУТЕ ЗЛАТОГЛАВАЯ)
 - グジェリカ
 - クレプカヤ
 - サハリンスカヤ (Сахалинская) - サハリンのウォッカ。
 
その他の地域[編集]
- フィンランディア (Finlandia) (フィンランド)
 - アブソルート (Absolut) (スウェーデン)
 - レベル (Level) (スウェーデン)
 - スヴェードッカ (Svedka) (スウェーデン)
 - グレイグース (Grey Goose) (フランス)
 - ケテルワン (Ketel One) (オランダ)
 - 42 ビロウ (42 Below) (ニュージーランド)
 - アイスバーグ (Iceberg) (カナダ)
 - スカイ (SKYY) (アメリカ)
 - スミノフ (Smirnoff) (アメリカ)
 - ダイアモンド 100 (Diamond 100) (アメリカ)
 - クレーター・レイク (Crater Lake) (アメリカ)
 - マザマ (Mazama) (アメリカ)
 
ウォッカベースのカクテル[編集]
(英語名順)
- アキダクト Aqueduct
 - バラライカ Balalaika
 - ブラック・ルシアン Black Russian
 - ブラッディ・シーザー Bloody Caesar
 - ブラッディ・マリー Bloody Mary
 - ブルー・ラグーン Blue Lagoon
 - チチ Chi Chi
 - カミカゼ Kamikaze
 - モスコミュール Moscow Mule
 - ルシアン Russian
 - ソルティ・ドッグ Salty Dog
 - スクリュー・ドライバー Screwdriver
 - セックス・オン・ザ・ビーチ Sex on the Beach
 - ウォッカ・バック Vodka Back
 - ウォッカ・ギムレット Vodka Gimlet
 - ウォッカ・ライム Vodka & Lime
 - ウォッカ・マティーニ Vodka Martini
 - ウォッカ・トニック Vodka & Tonic
 - ウォッカ・リッキー Vodka Ricky
 - ホワイト・ルシアン White Russian
 - 雪国 Yukiguni
 
※一部の缶チューハイはウォッカベースのものがある。
関連項目[編集]
- ドミトリ・メンデレーエフ(ウォッカの製造技術を標準化し、アルコール濃度を現在のものに定めたという俗説が広まっている)実際にはそのようなことはなかったという調査がある。[2]
 - 酒
 
脚注[編集]
- ↑ 1.0 1.1 1.2 『EUのウオツカ戦争終結=定義めぐり合意』2007年12月18日付配信 時事通信
 - ↑ http://www.nichiro.org/00_news/news.cgi?action=vew&code=81 ISBN 978-4885956164 など参照。
 
| アルコール飲料 | 
| アルコール | 
| エタノール - 酔い - 飲酒運転 - 二日酔い - 醸造 - 密造酒 | 
| 醸造酒 | 
| ビール - 発泡酒 - ワイン - 梅酒 - 日本酒 - りんご酒 - 黄酒 - マッコリ - 蜂蜜酒 - ペリー | 
| 蒸留酒 | 
| ウォッカ - ジン - ラム - ウイスキー - ブランデー - テキーラ - 焼酎 | 
| リキュール | 
| 香草・薬草系 - 果実系 - ナッツ・種子系 - その他のリキュール | 
| その他のアルコール飲料 | 
| キルシュヴァッサー - ピスコ - 白酒 | 
| カクテル | 
| ウォッカベース - ジンベース - ラムベース - ウイスキーベース - ブランデーベース - テキーラベース - その他ベース - ノンアルコール | 
| 関連項目 | 
| ライ麦 - 麦芽 |